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光一は嬉しそうに笑って言った。
「君と仲良くなりたいんじゃないのかなぁ」
「なんで」
本当に「なんで」と聞くしかなかった。今まで挨拶すらしたことなかった奴らが、なぜ突然。目が合うと怯えたような顔つきですぐに顔を背けていたやつらが、どうして。
「そりゃぁスクールカーストのどの位置にも属さない気高き背反者の君が、かたや僕のような陰キャと仲良くしていたら、みんな興味を惹かれるんじゃない? それに元々君は一部の女子には人気あったよ」
朝、明吉が親しげに接していたのも要因のひとつだった。だが彼らは気が付いていない、先日の光一の叫びが一番クラスメイトたちの心を動かしたという事実に。
「何だよそれ……」
貴絋は素直に喜べなかった。
「これを機に色んな人と仲良くなってみたらいいんじゃない」
全然嬉しくない。煩わしい。
「別に、俺は……」
光一と楽しくやれてればそれでいいのに。
貴紘は、出かけたその言葉を口に出せるはずもなく、面白くない気分とともに一息で飲み込んだ。
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