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ミニトマト
光一がせっかくデジカメを持ってきたのに工場内は撮影禁止だった。代わりに彼は熱心にメモを取って、質問までしている。
「辻くん、僕のお弁当一緒に食べようよ」
見学を終えた後、光一が親切にそう言った。
「サンキュ。でもランドセルの中に弁当入ってた」
「なんだ! 持ってきてたんだ。お母さんが入れてくれてたの?」
「……まあ、そんなとこ。で、悪いけど俺一人で食べるわ。そんじゃ」
「えっ? なんで……」
まさか断られるとは思っていなかったであろう光一の驚いた顔に背を向け、貴絋はそこを去った。何が入っているかわからない弁当を見られるわけにはいかない――自分の料理がありえないほど下手なのは、自分が一番よく知っている。
いくら天才だとしても寝ぼけたまま作ったのだ。中がどうなっているか予想もつかない。貴絋は昨日の冷蔵庫の中身を思い出そうとしたが、自分が覚えているのは牛乳とアイスの位置だけだった。野菜室など生まれてこのかた見たことがないことに気が付く。
公園の隅の、大きな木の下にあるベンチに座った。日陰になっていて丁度いい。
貴絋はランドセルから弁当箱を取り出すと、恐る恐る蓋を開けた。
「うおぉッ!?」
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