ミニトマト

4/6
前へ
/389ページ
次へ
 貴絋は彼女の方を見ないまま話を続ける。 「学校終わったら話がある。逃げんなよ絶対」  ――これ知ってる。告られるやつね。  ダイアナは高鳴る胸を押さえながら、そこを走り去った。  ――早く皆に報告しなきゃ!!  □ 「あー! 辻くんどこいってたのー? ひどいよ急にどっか行っちゃうんだもん」  歩いてくる貴絋を見つけた光一は、レジャーシートから立ち上がって駆け寄った。 「いや、俺変な弁当だったから……」 「なにそれ? いいからこっち来て座りなよ」  光一の座っていたレジャーシートにはいつか図書室で見た二名の男子生徒も座っている。特別気まずそうにしていたそのうちの一人は、名前を直也(なおや)と言った。 「みんなでおやつ食べよー」  光一がリュックサックから何かを探している最中、直也は貴絋の方へ向き、口を開く。 「辻くん、ごめん」  貴絋は表情ひとつ変えず彼の次の言葉を待ったが、しばらくの間沈黙が流れた。 「ごめんって何が?」  貴絋がしびれを切らして聞いた。直也は顔を赤くしたまま何かを言いかけて、やめる。それを繰り返すものだから、貴絋が静かに苛立ち始めるのも無理はない。     
/389ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加