19人が本棚に入れています
本棚に追加
貴絋は彼女の方を見ないまま話を続ける。
「学校終わったら話がある。逃げんなよ絶対」
――これ知ってる。告られるやつね。
ダイアナは高鳴る胸を押さえながら、そこを走り去った。
――早く皆に報告しなきゃ!!
□
「あー! 辻くんどこいってたのー? ひどいよ急にどっか行っちゃうんだもん」
歩いてくる貴絋を見つけた光一は、レジャーシートから立ち上がって駆け寄った。
「いや、俺変な弁当だったから……」
「なにそれ? いいからこっち来て座りなよ」
光一の座っていたレジャーシートにはいつか図書室で見た二名の男子生徒も座っている。特別気まずそうにしていたそのうちの一人は、名前を直也と言った。
「みんなでおやつ食べよー」
光一がリュックサックから何かを探している最中、直也は貴絋の方へ向き、口を開く。
「辻くん、ごめん」
貴絋は表情ひとつ変えず彼の次の言葉を待ったが、しばらくの間沈黙が流れた。
「ごめんって何が?」
貴絋がしびれを切らして聞いた。直也は顔を赤くしたまま何かを言いかけて、やめる。それを繰り返すものだから、貴絋が静かに苛立ち始めるのも無理はない。
最初のコメントを投稿しよう!