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「違う。あいつら隙あらば先生にチクりたくて俺のこと監視してんだ」
光一が席から立ち上がり、隣の椅子を引く。
「良かったら隣座らない?」
その他二人に緊張感が走るのを、図書室の静かな空気が鮮明に貴絋に伝えた。
「いや、奥で読むわ」
貴絋はくるりと背中を向けて光一に手を振った。その他二名の安堵した表情が容易く想像できる。
「なんの漫画かな」
貴絋の背中を見送ってその他二名に反応を求めると、いかにも居心地の悪そうな顔で黙っている。続けて小声で光一に問い詰めた。
「いつの間に仲良くなってんの」
「学校に漫画持ってくるとか不良じゃん……」
二人の戸惑いの表情を見た光一は、貴絋がなぜここに来たのかを思い、それをできれば自分の勘違いでありますようにと願った。
少し猫背になった彼の背中を眺める。随分小さく見えた。
光一が人生のどこかで味わった感情を、貴絋は今、噛み締めている。それが子供にとっては想像以上に辛いことを光一は知っていた。
「僕、辻くんと読むよ」
その他二人は無言で顔を合わせる。
オレンジ色の床は太陽の光を吸って温かく、上履きを脱いだ足に心地よい。
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