ミニトマト

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 光一と直也の驚いた顔を見た貴絋は、瞬時に思った。  やっちまった。恥ずかしい。  それでも引っ込みがつかなくなったので、立ち上がって靴を履く。 「辻くんどこ行くの!」 「自販機」  慌てて追いかけてこようとする光一の気配を感じて、悪い気は起こらない。  やっと追い付き肩を並べた光一に、貴絋は告げた。 「……謝らないからな」 「いいよ、君が怒る気持ちは当然だと思う」  光一の言葉を意外に思った貴絋だった。てっきり、言いすぎだと咎められるのかと思ったのだ。  二人とも、そのまま前だけ見つめて話し続ける。 「お前あいつの友達じゃねーのかよ」 「うん。でも僕は、君の友達でもあるから。一応フォロー入れとくね、直也が反省してたのは本当だよ」 「……まぁ別に本当はそんな怒ってねーよ」 「わかってるよ、早く返してもらえるといいね」  自販機で牛乳を買った後、二人の所に戻ってみんなでおやつを食べた。直也の母親は寝坊して弁当を作れなかったという。だからコンビニのおにぎりを持参したと聞いた貴絋は、その手があったかと、しばらく落ち込んだ。
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