ブラウニー

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ブラウニー

 念のため真織の靴がないことを確認し、貴絋はすぐに自分の部屋に入った。ランドセルを脱ぎ捨てるとベッドに腰掛け、深く息を吸う。 「話あるんだけど」  もしこの状況を何も知らない人に見られていたら、さぞかし滑稽に映るだろうと貴絋は思った。一人で誰もいないところに話しかけているのだ。そう考えるとだんだんと恥ずかしさが込み上げてくる。  返事はないし、思わず目を伏せたそのとき、頭の中で声が響いた。 『私の事呼んだの?』  全身に鳥肌が立った。恐怖というよりは、驚きと好奇心の方が多い、不思議な気持ちだ。 「お前誰?」  率直に聞いた。聞きたいことがありすぎて、何から聞けばいいのか。とりあえず思い付いたことをすぐに口にする。 「なんで俺にだけお前の声が聞こえんの? お前は俺にとり憑いた幽霊かなんかなの? 何が目的? どうやって成仏すんの?」 『聞きたいこと、それだけ?』 「なんで死んだの」 『ぜーんぶ教えてあげないっ!』 「なんでだよっ!」 『覚えてないんだもの』  貴絋はすぐに大きなため息をついた。なんだか急に肩の力が抜けた気がしたのだ。
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