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「俺にとり憑いてんの何の霊だかわかる?」
「少し待ちたまえ」
光一はランドセルの中から虫眼鏡のようなものを取り出すと、それを通して貴絋の全身をくまなく調べた。
「これは僕の家系に代々伝わる……」
「あっ、それ理科室のルーペじゃん返せよ」
「違うっ! これは魔道具だ! 僕のことは歩く魔道具収集家と呼んでくれ!」
「収集家はフツー歩くもんだろ!」
しばらく黙りこんだ光一が満足そうな顔でルーペを机に置くと、今度は貴絋の顔を見つめてはっきりと言った。
「査定が終わりました」
「中古のゲームソフトかな 」
「若い女性が見えました。しかし悪霊ではありません。あなたを時々見守っています。」
貴絋は心臓が止まるかとおもうほど驚く。
――怖すぎ。
女性だという所は当たっている。
確認しようもないが、ララは声を聞く分には明らかに女性だった。
「どんな奴なの? 祓えない?」
「見えると言っても姿形を認識しているわけではありません。僕は、その魂の形状を見て判断しているのです。先日僕のこっくりさんが機能しなかったわけと、君のオーラが紫色をしている意味がやっとわかりました。二人居るんだからオーラの色が混ざりあっていたのです。祓うなんてとんでもない。いつか自然に別れるときが来ます。そう遠くない未来……その魂が、目的を果たすとき」
貴絋はひどい疲労感を覚え、机に突っ伏してしまった。
「マジかよ。ずっとこのままで居ろって言うのか……」
「はっ……。 僕は一体何を?」
トランス状態から解放された光一は、乱れた髪を両手で撫で付けながら貴絋を心配そうに眺めた。貴絋は半ば放心したように遠くを見つめている。
「泣きたい」
「元気だして。今日はパーっと飲みに行こうよ!(コーラ) 四時間目終わったら帰れるしさ。どっか行かない?」
光一のその言葉を聞いてやっと貴絋は身体を起こす。
「……行く」
「じゃ、決まりだね」
光一の励ましのおかげで、すでにこの瞬間に貴絋はララの存在を忘れた。
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