減塩味噌汁

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「せっかくだからそのパン食べれば? 食べたことないなら母さんにも持って帰ってやれよ。あ、牛乳でいい?」  貴絋はグラスを2つ持ってテーブルに置いた。続いて冷蔵庫から出した牛乳パックから、並々と注ぐ。 「ありがとう! 辻くんはここのパン食べたことあるの?」 「ああ、俺ここらのテイクアウトはほとんど網羅してるから」 「へえ! そうなんだ、グルメな趣味なの?」 「生きるため」 「どういう事!?」  パンを袋から取り出すと、驚いたことに10個以上あった。デザート系からおかずパンまで、バリエーションは様々だ。これはいくら二人でも多すぎる、あの人は一人で食べるつもりだったのか? そう思うと戦慄した。 「僕これ食べていい?」  光一が選んだのは、リンゴとさつまいもが入った可愛いパンだった。貴絋なら絶対にしないチョイスである。 「……遠慮してる?」  貴絋は言った。 「何が? 僕、これが一番おいしそうだと思って」 「普通ハンバーグとかウィンナーのやつ選ぶじゃん! お前それでも金玉ついてんの?」 「ついてるよ! 2つも!」 「いや俺もだけど」  理不尽な言いがかりを付けられた光一だったが、幸せそうにそのパンを頬張ると叫んだ。 「超おいしー! ああ、でももうひと味つけたすなら、クリームチーズだな」     
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