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「お前、減塩味噌汁に塩入れて飲むタイプだろ」
貴絋の言葉を受けて光一はきょとんと首をかしげて尋ねる。
「何それ?」
「そっか。減塩味噌汁知らないって、幸せなことだぜ。お前の母さん料理上手だもんな」
腑に落ちないような表情を浮かべつつ、光一はさらに尋ねた。
「お母さんて言えばさ、辻くんのお母さんってどんな人なの?」
貴紘は嫌悪丸出しの顔で答える。
「飯がクソまずい。俺以外なら耐えられない、多分お前なんかが食べたら即座に死を覚悟するレベル。飲み込む前に舌を噛んだ方がましだと思えるほどに」
即答だった。光一はただただ驚いて、返す言葉を捜しているように見える。
つかの間の沈黙のあと、玄関の方でカチャリと鍵の開く音がして、真織の声が聞こえた。
「ただいま! 貴くん、お友達?」
リビングのドアから真織が顔を覗かせた。その顔は、いかにも嬉しそうな笑顔である。
「……貴くんって呼ぶな」
こんなに早く帰ってくるとは思いもしなかった貴絋は、勝手に友達を連れ込んだことに嫌な顔をされるのではないかと勘ぐったが、実際にはその逆だった。
「こんにちはー! お邪魔してます。僕は貴絋君と同じクラスの松葉光一です」
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