君の笑顔を見たくなくて、そっぽを向くことしかできなかった。

3/3
前へ
/3ページ
次へ
そこには、幼稚園の頃から知っている幼馴染の姿があった。 アイツはネクラで、本ばかり読んでいて、友達がいなくて。顔はそれなりに整っているのに、その顔を隠すような分厚いレンズをした眼鏡をかけている。 わたしがいることなんて分かっているはずなのに、目も合わそうとしない。肘をついて窓の方に顔を向けて、ちっともこちらを見てくれなかった。 (…何よ。可愛い幼馴染が別の子とお付き合い始めたって言うのに) アイツはいつもそう。 いつも1人なアイツが可哀想で声をかけてやってるのに、いつも不機嫌そうな顔をして、すぐにそっぽを向いてしまう。 私がお喋りしても相槌1つ打たないで、黙ったままでいる。 何で、こっちを見てくれないんだろう。 私が可愛くないから?魅力がないから? そのことが悔しくて、私は頑張って自分磨きをした。 お化粧して、思わずこっちを見てくれるほど可愛くなる研究をした。 友達とのお喋りとか、たまに起こる面白いことを少し誇張して話して、気を引かせようと頑張った。 それでも、アイツはこっちを見ようとしなかった。ずっと窓の外を見つめ続けたまま、イヤホンまでつけて。 (…バカ。アイツ、ホントにバカ) 悔しくて、悔しくて。 それでも、私は笑ってみせた。 だって私のそばには、みんなが羨む人気者な彼氏がそばにいる。 そして、私たちの関係を祝福してくれるみんながいる。 これ以上幸せなことなんて、滅多にないわ。 そう言い聞かせて、私は目を細めて笑う。 ーーキリキリと痛む胸の叫びに、気づかないふりをして。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加