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茜は僕のことを『醜いアヒルの子』と言っていたけれど……その通りだと思う。結局僕は、違う自分を本当の自分だと思い込んでいるだけなんだ。
……今だって変わってやしないけど。
自分でも、そう思っていたからこそ、茜に惹かれたのかもしれない。
僕は茜のことが好きだったのだろうか。
茜は思ったことをはっきり言う、僕みたいには取り繕わない『野良猫』だったから。群れたりしないで1人で生きてる野良猫みたいだと思った。
僕とは真逆の性格だったから僕は話しかけてみようと思った。結果は拒絶されたけど。あの時は何度も何度も話しかけられたけど……今は。
そんなことを考えながら僕は茜が来てくれるのを待った。
だけど……その日、茜は来なかった。
いくら待っても、日が沈んでしまっても茜が来ることはなかった。
きっと茜は僕と会いたくなかったんだろう。
きっともう、許してくれないんだろう……
そう思って僕は茜を待つことを諦めて家に帰った。
そして次の日、茜が事故に会って死んでしまったことを知ったのだった。
なんで茜が……。
やっと茜と話すことを、茜と向き合うことを決めたのに。
どうして僕から……僕の周りから、
人を引き離していくんですか。
そう、神様に聞いてみたかった。
このままなにも話せないのは嫌だ。
だからどうか、奇跡を起こしてくれないか。
神様に、願いを込めて、呟いた。
《もう一度だけ、茜に会わせて下さい……》
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