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「転校生?」
「そう、転校生が来るんだってよ!それも女子だぜ。女子」
「え、どこのクラス?」
「さぁ……」
……転校生?今の時期に転校生か。いまは6月だから、もうグループとかもできてるし、なじみにくいだろうなぁ。もし、機会があったら話してみるか。
「……でさぁ今日ね。……がさ…………」
「まじで!?うわぁ!大変だな~」
「ほんとだよ。」
「ドンマイじゃん笑」
「でねー……」「きゃあっ!!」
[ドンッ!!][バサバサバサッ]
あ、誰かとぶつかちゃった。
「大丈夫!?ごめんね、怪我してない?」
大丈夫かな?前見てなかったから……。
あれ?この制服、この学校のじゃない……?
「え……?あ、だ、大丈夫です。すいませんでした。失礼します。」
「え、あ、うん」
行っちゃった……もしかして転校生ってあの子なのかな……?
「なあ、赤瀬。例の転校生知ってるか?」
「転校生?なんかあったの?」
「その転校生、なんかめっちゃ愛想悪いらしくて、もう孤立してるらしいぜ」
「うーん……人見知りとかじゃ……」
「でな、その転校生さぁ。青山 茜って言うらしいぜ」
「え……?」
あおやまあかね? 今、こいつそう言ったよね。
まさか……そんなわけ。
僕の知ってる青山茜は『愛想が悪い』『孤立してる』といった感じ。
今見た子も。
前もそうだった、そんなことで悩んでた。もしかして、茜なんじゃないのか。もし、茜だとしたら……。
あの時の約束を、果たすべきなんじゃ。
でも……僕は、嘘つきのままだ。会いに行っても、許してくれないかもしれない。それに……本当の僕を知ってる茜に会ったら、取り繕った僕が壊れてしまうんじゃないか。
……また、僕の周りから離れていくんじゃないか。
茜かもしれないということを知ってから、なんとなく僕は落ち着かなくなっていた。
そして……『かもしれない』ではなく、茜なのだろう、ということもわかった。何度か、僕に話しかけようとしてくれたことがあったからだ。でも僕は、気付かないふりをして、もしくは都合が悪いという感じで茜と話そうとしなかった。
数日経っても、一ヶ月たっても、僕は茜に会いにいくことができないまま、過ごしていた。
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