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「きゃあっ!!」
ぶつかってしまった。男の子と。しまった、私は人と接するのが苦手なのに。
こういう時、私は固まってしまう。
「大丈夫!?ごめんね、怪我してない?」
相手の男の子が心配して倒れた私に手を出してくれた。
……え?この人、なんだか潤に似てる……。
いや、まさか。そんなわけない。
「え……?あ、だ、大丈夫です。すいませんでした。失礼します」
しまった、動揺していつも以上にぶっきらぼうになってしまった。
「え、あ、うん」
もしかして、本当に潤だったら……なんて。でもそうだとしたら。確認しないと。その上で話をしたい。
桜ヶ咲高校に転校して、私はもう孤立してしまっていた。
私はあのときから何も変わっていない。だからまた『野良猫』みたいに周りを警戒して拒絶していた。
そして、前にぶつかってしまった男の子が潤である、ということもわかった。
子供のときは『黒崎潤』。
いまは『赤瀬潤』。
約束をした時に言っていた。次に会うときは『赤瀬潤』であると。絶対に会うために覚えておいてと。だから彼が、私の知っている潤だとわかった。
それから……何度か潤と話そうとして見たけれど、話せなかった。
私のことを覚えていない、という訳では無いみたいだったけど。
多分、潤が前よりも明るく、誰からも好かれるように変わっていることが原因なんだと思う。
私が嘘つきを嫌いだと言ったから。
私がもっと好かれる性格だったらと潤に言ったから。
もしくはもう私を許さないという意思表示なのかもしれない。
彼とあの頃みたいに戻ることはできないのかもしれない。
そうして曖昧なまま、彼と話せないままで1ヶ月以上が経っていた。
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