4「吉田広樹」

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4「吉田広樹」

 昨日の夜、あのメッセージを送るとすぐに木村からの返信が届いた。 ーーおお。委員会か何かで一緒になったのか?   いや、違う。僕はそう言った後、この辞書の仕掛けを木村に説明した。この辞書に書かれた言葉の意味は、表紙の「吉田広樹」の主観であるということ。そして、その「吉田広樹」が、自分たちの同級生である可能性が高いということ。最後に、僕はその人を見たことがあるということ。  何分もかけて僕がたどり着いた一つの考えを、LINEの緑の吹き出しの中に納めるのはなかなか難しかった。でも、胸の中でプルプル震えている好奇心が、僕の親指をこれでもかと動かした。 ーーそれが本当だとしたら、なんで俺らの同級生の辞書が作られたんだよ。そういう趣味を持ってる奴なのか?   木村の返信は現実的なものだった。しかし、それが僕の興奮を抑える理由にはならなかった。目の前に広げてある小さな辞書が、僕たちをひと味違った日常へと案内してくれそうな気がしてならなかったからだ。 『とりあえず、明日本人に聞いてみよう。話はそこからだ。』  
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