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プロローグ
名刺くらいの大きさの紙を受け取って、とりあえず傷だらけの机に置いた。僕の席は教室中を見渡せる、一番隅っこの席。だから、こうやってプリントを配られる時はいつも最後に届く。それまでは何も考えず、いつもただぼーっとしているだけだ。
「何書くんですかー」
「今から言います。」
教室のあちこちでくすくすと声が聞こえた。
先生は顔を上げ教室の三十二人をぐるりと見回すと、
「みなさんはもう、三年生です。」
と、皆に押しつけるように話し始めた。
「中学校生活も、残りあとわずかとなりました。今月末には中体連の大会がありますね。引退したら、受験勉強が始まります。」
受験。たった二文字が、僕たちの行く道に大きな壁を作る。反対の方から、ああ~。とわざとらしい落胆の声が聞こえてきた。やっぱり木村だ。
先生はふふ、と小さく笑みを浮かべ、すぐに話しに戻った。
「えー、皆さんはこれから各々の進路を決め、人生を歩んでいく必要があります。」
皆、黙っている。そんなことは分かっているよ、というように、皆冷静に話を聞いている。こんな話は中学に入学したときから聞いている。だから、誰も驚いたりため息をついたりはしなかった。
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