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そう、声を荒立てて木村が辞書を僕から取り返すと、廊下の方が少しずつうるさくなってきた。二人して、反射的に黒板の上の時計を見る。
「やば、もう三分前じゃん。次何だっけ?」
「次は理科だったと思う」
「うわ、俺教科員だから行かなくちゃ! とりあえず、辞書は大事に持っとけ! それじゃ!」
そう辞書をバックに放り投げると、木村は返事も待たずに教室を出て行った。そしてその後すぐ、楽しいことをしたであろう人達が教室に戻り、すぐに耳がその話し声で埋められた。またにぎやかな時間が始まる。
机の上には僕のバックと、その上では「吉田広樹大辞典」がじっと僕を見つめていた。
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