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『吉田広樹と同じ名前の奴発見!』
夜九時三十六分、木村からのLINEだった。机に広げた受験対策のドリルは一端置いといて、神経を画面に集中させる。
『まじ? 何年生?』
僕がそう送ってから五秒も経たずに、返信がやってきた。
『三年。ていうか去年クラスメートだったわw』
木村の去年のクラスメート。という事は吉田広樹は去年、木村と同じ三組に居たという事になる。どの学年もクラスは三つまでしかないが、彼の顔は全く思い出せない。
『今日の昼休みからなんかモヤモヤして、部活の時まさとに聞いたら「一組に確かいる」って』
『まじか。どんな人だったか覚えとる?』
『いや、全然記憶にないww まさともあんま知らなそーだった』
『そっか』
吉田広樹という名前の人が、一組にいる。だけどーー
『辞書とは関係なさそうだね』
そう送ると、木村が
『そんな珍しくないもんな。吉田広樹って名前』と、僕の考えを文字で代弁してくれた。
『確かに』
そうして、会話は終わった。スマホの画面が眠ったように静かになる。
吉田広樹大辞典。そう書かれた厚い辞書は、昼と変わらぬ顔で机の端に置かれている。
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