4「吉田広樹」

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 そんなLINEを送って昨日は終わったが、実際、一組にいたあの男子が本当に吉田広樹である確率は低い。放課後の教室に残る生徒なんていくらでもいるだろう。でも、放課後になると僕の足は一組の教室に引き寄せられていった。  正直、こんなことしてる場合ではない事は分かっている。今日は五月十八日。中体連の支部大会が、五月三十日。二年半も続けてきたバレーの最後の大会が、約二週間後に待っているんだ。練習内容も、試合の様にコートに六人を入れた実践練習が中心になっている。木村は帰りの学活が終わるとすぐに野球のユニフォームに着替えてグラウンドに行ってしまった。昨日よりも強くなった野球部のかけ声の中に、彼の声が混じっている。  野球部だけじゃない。他の部活も皆そうだ。どの生徒も急いで練習場所に向かい、いつもより早い時間からアップを始めている。朝や昼休みに自主連をやってるところもある。  僕はそんな彼らのかけ声が微かに響く廊下で、一人歩いている。 「なんで部活にそこまでできんだよ」  誰にも聞こえないように、ため息混じりでそう言ってみた。肩に掛けたサブバックが、僕の歩きに合わせて力なく揺れている。     
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