プロローグ

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 小学校の頃は簡単だった。皆「サッカー選手」とか「マンガ家」だとか、自分の思うままにあこがれの仕事を言える。だけど、それが段々「夢」である事に気づいてきた。夢っていうのは所詮、現実から離れた空想でしかない。夢は、叶わない。中学に入ったらそれに気づかされてしまった。  それなのに、未だに「夢」を聞かれることがある。なんでそんな残酷なことをするのかは分からないが、書くしかない。今熱心ペンを動かしている皆は、きっとどこかで妥協をしているはずだ。「恥ずかしい人」って言われないような、丁度良い夢を書いているんだろうな。  でも、僕にはその「丁度良い夢」すらも見つからない。今目の前にある紙みたいに、自分の将来は真っ白だ。  時計に目をやると、授業終了まで残り五分を切っていた。まずい、何か書かないと。僕は頭をかきむしって、ペンを叩きつけた。  
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