1「わだかまり」

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 この日の数学の授業はプリント学習だった。内容は因数分解。なかなか面倒くさい単元だ。授業の後半になると、ペンを放り投げて周りの席の人と話し始める人が出てきた。たいてい、さっきと同じ人だ。  すると、 「分からん! 教えて!」  前の席の陵が、椅子を百八十度回転させて詰め寄って来た。 「えー、どこが分からんの?」 「カッコいち」 「お前先生の話し聞いてなかったろ!」 「眠かったの、俺は! とにかく教えて」  しょうがないなぁ、と僕は解き方を説明した。結構時間がかかると思ったが、ものの一分ぐらいで「あ、なるほどね! はいはいはい」と自分の席に戻った。本当に眠かったんだなこいつは。  授業が終わると、あとは掃除をして部活だ。みんな活力を取り戻してそれぞれの活動場所に向かうが、僕はそうでもない。小学校の友達が皆入ったから自分もバレー部にしたが、そもそも僕は運動が得意ではなかった。 だから試合で出される事はないが、きつい練習には参加している。そんなんでよく今まで続けられたなと思う。  五十問のプリントを埋めて少し経つと、皆が待ちわびていたであろうチャイムが鳴った。 「ありがとうございました」  中身のない軽い礼を交わした後、教室はいつもの活気を取り戻した。 「あー、眠かったー」    陵は少し横長の体を伸ばして、椅子を机の上に上げた。そうだ、次は掃除だった。そして、部活。めんどくさいな。     
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