2「落ちていた大辞典」

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2「落ちていた大辞典」

 今日も朝がやってきた。昨日は少しだけ宿題をやってすぐに寝てしまったので、いつもと違って目覚めは良かった。目をつぶったら気づいたら夢を見ていて、自分はそれを夢だと疑わなくて、目が覚めたらそれが夢だと気づく。これは生まれてから幾度となく繰り返してきた事だけど、よく考えたら結構怖いことだと思う。 「ごはーん!」  母の声だ。一階からなのに、よく響く。  武田家の朝は慌ただしい。リビングに行くと少ないご飯と昨日のおかずがテーブルを彩り、テレビからはアナウンサーの淡々とした喋りが聞こえてくる。 「今日は帰り何時なの?」  口にパンを放り込みながら、母が聞いた。 「七時」 「そっか水曜か。自主練だな?」  まあ、自主っていっても半強制的にやらされるけど。そんな事を考えると、まだ昨日のモヤモヤが抜けていないことに気づいた。 「ま、後少しの辛抱でしょ」  それを聞くと、母はカレンダーを見つめて「そっか、後少しか……」と呟いた。パンを噛むのは止めていない。  正直、僕より母の方が部活に対する思いは大きいと思う。まあ、親が子供より熱中するのは、運動部ではよくあることだ。大会の応援を見るとそれがよく分かる。     
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