幽霊の思い出話

第1章

　釘と金づちは、いつかこれをやってやろうと思って準備していたんだ。女の子がいつもその人形を持ち歩いているのは知っていたからね。
　釘を打っている間、ずっと下から悪友達のゲラゲラ笑いが聞こえてきていたよ。
　私が木から降りてくると、女の子はもう泣きもせず黙ぁってこっちをにらみつけていた。
（恨んでやる）
　と声には出さなかったけど、そう言っているのはその目でわかった。。
（ずっと恨んでやる）
　とね。
　でも、私はほんのちょっと不気味に思っただけで、すぐに忘れてしまった。その女の子をいじめることも、他にもっと楽しい遊びができると忘れてしまったんだ。
　でも、釘や人形は忘れられても消え失せたりしない。木はゆっくり成長する。釘も、それに合わせて空近くまで押し上げられていったのだろう。人形は、雨や直射日光にさらされて、ちぎれて落ちたのだ。ひょっとしたら、ボロボロになった無残な姿で落ち葉の下にまだ隠れているかも知れない。
　そして、残った釘に、私は貫かれた……
　その女の子が今どうしているか知らない。案外、私が死んだことも知らずにどこかで幸せに生きているんじゃないかな。