1人が本棚に入れています
本棚に追加
教室から中庭を見下ろすと、美男美女のカップルが誕生していて、そんな二人をそうじゃない人たちが取り囲んで祝福しているという世界があった。
「あー、文化祭って感じ。みんな浮かれちゃってさ」
誰もいない教室で、あたしはそう呟いた。今は文化祭最終日の夕方。みんなテンションが上がっているからなのか、カップルが続々と誕生している最中だ。
「わかるー」
聞き慣れた声がして、振り返ってみると、クラスメイトで親友のメイが立っていた。
「そんな格好で言われても、全然説得力ないんですけどー」
メイはフリフリのドレスを身に纏っていた。あたしたちのクラスは文化祭でシンデレラの劇をして、メイがそのシンデレラ役だったから、まあ仕方ないんだけど。だけど、メイはそんなお姫様の格好がよく似合っていて、ニコッと笑うその姿を見ると、本当にどこかのお姫様なのかと勘違いしてしまうくらいだった。
「っていうかどうしたの? もう着替えるの?」
あたしがそう尋ねると、メイにさっきまでの笑顔が消え、メイは寂しそうな表情を浮かべた。
「……うん」
夕焼けに照らされるメイは、まるで王子様に会えなくて寂しい様子のお姫様のようで、劇がまだ続いているみたいだった。
「なんで? ヒロトくんは?」
メイの目が少し大きく見開いたのをあたしは見逃さなかった。
「なんでヒロトのことが出てくるの」
「だって……」
メイの質問に上手く答えられなくて、思わずメイから目を反らしてしまった。そんなあたしの姿を見て、メイははあとため息をついた。
「……だって、ヒロトが悪いんだよ。女の子に囲まれてデレデレしちゃってさ。ホントやだ」
そういいながら、メイはあたしがいる窓際までやってきて、あたしの隣に並んで、ため息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!