雨粒が叩くは

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「やり過ぎだと? そんなことはない。……ま、場合にもよるがな。とにかく、ゴブリンの性根を甘く見ないことだ」  ゾマニィは、直刀の血脂を拭って鞘に収めると、ゴブリン共の所持品を手早く物色した。金銭と、換金出来そうな物の半分をゴインに渡し、残りを自分の物とした。荷物になりそうな、武器防具には手を付けなかった。……いや、銀の短刀の一振りには目を留め、ゴインに確認を取った上で、雨具の隠しに入れた。 「夜になれば、死骸は魔獣が片付けてくれるだろう」  ゾマニィは、廃屋の陰に置いていた自分の背負い袋を取りに戻って、戦利品を仕舞った。  今頃になって、雨が上がってきた。 「礼を言っておく。有り難う」 「どういたしまして」  ゾマニィは、丁寧に応じた。 「さて。これからのことなんだが。私が落ち着いている宿、結構、いい酒を出すんだ」 「ほう。酒とな」  戦斧の手入れに取り掛かろうとしていたゴインの手が止まる。喉が鳴った。 「よかったら……んっ?」  ゾマニィは気配を感じていた。近付いて来る者が多数在る。目を向けると、自分に懇願してきたオークのお嬢ちゃん――若い雌オークが、十数体のオーク戦士を連れ立って来たらしいと知れる。 「オーク達じゃの。ほぅ、よく集まったの」  と、ゴインが感心した。  オーク戦士らから、喜色の籠った歓声が上がる。ゾマニィとゴインを讃えているようだった。 「私の言ったことは、忘れてくれ。どうも、彼らとの宴会になりそうな雰囲気じゃないか」  相手が陰性オークなら、言葉通りの宴会。只のオークならば、それは血祭り。 「遠慮なく楽しめばいいさ」  ゾマニィは、ゴインの肩を叩いた。 「他人事な言いようじゃの。オークの宴なら、勿論、お前さんも同席じゃぞ」 「えぇっ……」  困ったという顔を作ったゾマニィだったが、直ぐに吹いてしまった。  こういうことも、たまにはあるのだ。
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