2人が本棚に入れています
本棚に追加
2、時計
「強姦した上に殺人?穏やかじゃないね」
そう言いながら隆司は一宮の目の前に紅茶を置く。種類はわからないが、柑橘系のツンとした香りが一宮の鼻に届いた。
一宮は紅茶を受け取ると、難しい顔で口を開く。
「当り前だ、事件なんだから」
「そりゃそうだ」
何が楽しいのか、隆司は笑いながら一宮の向かい側に座った。
「なんか良いことでもあったのか?」
自分の頬に指をやり、隆司に彼の顔が笑ってることを指摘する。すれば「ああ、ごめん笑ってた?」ととぼけたように謝罪を告げた。
「不謹慎だったね、反省する」
「それはいいよ。何かあったのか?」
「たいしたことじゃないんだけど、兄さんが来るの久しぶりだなあって」
気が抜ける。いくら大したことではないと前置きされてはいても、ここまでどうでもいいことだとは思わなかった。
「そんなことか?久しぶりって言っても先週来たと思うんだけどな」
息を抜く一宮に「そうだっけ」なんて言いながら、隆司は自らの紅茶を啜る。相変わらず口は緩んでいるように見えた。
一宮はもう気にするのを止め、話を合わせることにした。
「まあ、昔は毎日一緒だったんだから、一週間合わないってのが変に感じるのかもな」
最初のコメントを投稿しよう!