2、時計

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 初めてその遺体を見た時、一宮はその殺害方法に強い憎しみを感じとった。  女性の首には犯人の掌の形がくっきりと跡付いており、鑑識の話では、首の骨も折れていたようだ。かなりの力がこめられていた証拠だろう。さらに彼女は性的な暴行を受け、それは彼女の死んだ後も執拗に行われていたらしい。  そのため、彼女の体内や遺体付近からは、犯人と思われる男の精液が多数検出された。そのおかげと言うのもおかしいが、犯人の特定はスムーズにいくと思われていたのだが。 「前歴がなかったんだよなあ」  つまりデータベースに当てはまらなかったのだ。これではせっかくの手がかりも意味がない。 「彼女の周囲の人間とかからも出なかったの?」 「当然怨恨の線も考えられたし、彼女に好意を寄せていた男や彼女の元彼、その他彼女の身辺の男からサンプルを採ったけどさ。全然ダメだった」 「それは、八方ふさがりだね」 「そうなんだよ。あとは被害者の首に残った手袋の繊維くらいだけど、そこからわかることは少ないだろうな…」  両手を伸ばしてテーブルに伏せる。     
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