沖田秀一先生の朝

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 普段の沖田先生ならネットゲームの利点を最大限に使い楽しむのだが、一応、今は出勤前の僅かな時間しかないため、沖田先生は一人黙々とレベルをあげていた。 「……ん?」  すると、レベル上げをしている沖田先生のキャラに、画面上で他のプレイヤーが近づいて来るのに気づく。  ここで話しかけられたら、ちょっと面倒だなぁ……と、沖田先生が少し困っていると、やっぱり相手が話しかけてきた(あくまでチャットである)。 『会議室に集合せよ!』 (…………は?)  一瞬、このゲームの中で会議室どこだ? と思った沖田先生だったが、相手が再度その言葉を繰り返すと、頭の中に一人の人物が出てきた。 「もしかして……近藤先生?」      その沖田先生の実際の呟きが聞こえたわけはないはずだが、まるで狙ったかのように目の前のプレイヤーが姿を消した。  きっとゲーム内からログアウトしたのだろう。 「まさか……盗撮とかされてないよね?」      あまりのタイミングの良さに、沖田先生が冗談混じりに呟くが、それに返ってくる答えはない。  気持ちを切り替えるために大きく伸びをすると、沖田先生はパソコンの電源を落とし前髪を結わっていたゴムを外した。  その途端、さっきまで見えていた沖田先生の可愛らしい顔の目元辺りまでが前髪で影になってしまい、急に地味な印象が強くなる。       
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