神様

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神様なんていると思うか? 俺は神なんか信じない。 ただ、悪魔ならいると思うぜ。 俺のことだ。 人は俺のことを悪魔と呼ぶ。 気に入らなければ、そいつを徹底的にすり潰す。ただ、俺は暴力は嫌いだ。だから罠を仕掛けてそいつを陥れる。 もっとも暴力沙汰となってもプロの格闘家レベルの相手でなければ負ける気はしないがな。 俺は、ガキの頃、施設で育った。 本当の親のことは何も知らない。 その施設はブタ小屋みたいな酷い場所で、そこで暮らすガキどもは職員たちのストレスの捌け口みたいにされていた。 特に反抗的な俺は、毎日のように拷問のような暴力や罵りを受けていた。 ナイフで刺されたこともあるし、便器に顔を押し付けられたこともある。 とにかく、そんな苛烈な毎日が、俺の中の悪魔を育んだ。 十五歳で俺は施設を出た。 逃げ出したわけではない。里親が現れたのだ。 里親は事故で子供を亡くした夫婦だった。 その子供が死んだのが十五歳。歳が同じでそいつと何となく顔が似ている。そんなくだらない理由で俺はその家に引き取られた。 ともあれ、俺はそうして施設を出て、自由に生きる機会を得た。 俺は必死に学び、体を鍛えた。 綺麗に生きるためなどではない。 力を得て、散々と俺を苦しめてきた施設の連中に復讐するためだ。 幸いなことに、里親の家は裕福で、しかも俺に協力的だった。 素質はあったし、努力も惜しまなかった。 その結果として俺は経営コンサルタント会社の社長となった。 もっとも、これは表向きの姿。 裏の仕事は、政界、経済界の裏情報を握る情報屋だ。 俺の前では、時の総理大臣すら媚びた笑いを浮かべる。 裏の力を駆使した結果、施設で働いていた連中はことごとく、奴らにふさわしい地獄へと連れて行かれた。
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