追憶

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 僕は子供の頃から価値観が他の人と合わないことが多かった。  だから……受け入れられることがないと分かった僕は両親にも話すことはしていなかった。友達にも、家族にも話さずにしようと。  けれど。僕がふと漏らしてしまった本音を彼女は笑わず受け入れてくれた。  その日から……僕の人生は大きく変わった。信頼できる人がいることがこんなにも心の支えになることを僕は知らなかったんだ。 「私もね、同じなの」  ある日、彼女は僕に言った。彼女も自分が受け入れてもらえないと思う時があったらしい。  僕達の関係は似たもの同士の、ただ認めてほしいという欲望を満たすための関係だったのかもしれないと僕は思う。  それでも。僕はあの日々が幸せだったということは確信を持って言える。  それなのに。今の僕は彼女に何も伝えられない存在になってしまった。  きっと彼女が泣いているのは同じ価値観を共有し、ある意味自分の半身とも言える存在が無くなったからだろう。  自分のことをそんなふうに言うのはいささか過大評価し過ぎだとも思うけど。  ああ、神様。  酷いとは思わないんですか?   この言葉を何度問いかけたことだろうか。  死を宣告されたあの日、僕は交通事故で死んだことになっている。なっている、というのは僕自身に実感がないからだ。  宣告された時、既に僕の魂は神様が僕の肉体から取り出していたから。肉体の方は神様の仕組んだ事故により損傷。  壊れた体にはもう、戻れない。  ただ神様は僕やあの子が傷つき、悲しむのを見て笑っている。  それがこの世界の真理だったんだ。  僕は『僕』がこの世界から消える寸前にこんなことを考えていた。走馬灯というやつだろうか。 「さよなら」  最後に呟いた言葉は風にかき消されて誰の耳にも届くことは無かった。
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