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僕の大事な人。
それは僕をどん底から救ってくれた女の子だ。恋愛関係とかそんなものではないけど。僕にとっては恩人とかそういう部類のもの。
彼女は、優しいから。僕が死んだことを3年が経った今でも悲しんでくれている。
もちろん両親も悲しんでくれてはいるのだけど。
僕にとっては彼女が、僕のせいで悲しんでしまっている事がとても辛かった。
彼女が泣いているのを見る度に胸がぎゅっと痛む。なにか言葉をかけてあげたくても何も出来ない、そんな無力感だろうか。
僕が死んだのは夕暮れ時、見れるのも夕暮れ時。
そして彼女が泣いているのも夕暮れ時。
お願いだ。
もうこんなのたくさんだ。
「神様、夕暮れを壊してくれよ」
「それは、無理な相談だな」
ニベもなく断られる。このやり取りももう何度目だろう。辛い気持ちになるたびに思い出す。幸せな思い出。
それは僕を苦しめる。だから、忘れたい。忘れてしまいたい。幸せな日々を。
心に刻まれた記憶を。消し去って楽にしてほしい。
消えたい。
もう、見たくないんだ。
ねえ、死んだあの時に『さよなら』はしたはずなのに。どうして、僕は未だにここから離れることが出来ないの。
「さよならを、許して」
夕暮れを壊すことが出来ないなら。
せめてさよならを、許してよ。
僕には悲しんでいる君を見ることも何も出来ないままここにいることも嫌なんだ。
だから。
「神様……」
「なんだ」
「僕はもうたくさんだ」
「だから?」
「『さよなら』を許して」
そう言って僕は飛び降りた。
この、世界から。これでやっと、僕は開放される。君との思い出も生きていた記憶も何もかもを忘れて。
ごめんね、こんな僕を……許して。
それはこの世界から『僕』という存在が完全に消えたことを意味する。完全な人生の終りを。
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