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「オレは神だ」
バスローブを身につけている見知らぬ人が、部屋の中央に置かれているちゃぶ台の上で胡座をかいていた。そして、日付を跨ぎかけた残業を終え、家に帰ってきた俺に向かって言った。眠気が全身を襲っていたので咄嗟に、これは幻覚というやつだ、と思った。さらに、何の為かは知らないが、足首の辺りまで煙が溜まっている。これ程非常識なことが起きているとき、体育だけが赤点だった俺にある選択肢は一つしかない。
「オレこそが本物の神だ。さあ、崇め奉れ」そんなことを言っている不審者を横目に、俺は手に持っていたスマートフォンで電話を掛けようとした。もちろん、一一〇番だ。
「なあお前、ナニやってんだよ、まさかこのオレ様をサツに送るのかっ!」そう自称神が言ったとき、俺の左手は『0』を押し終えていた。
「もちろんそのつもりですが?」
「なんで通報なんてするんだい?だってオレ様は、神様だぜ?」
「バスローブを着ている人を神だと思う人なんて、まずいないでしょう。もし、貴方が本物の神ならば、何か神だからこそ出来得ること、やってくださいよ」
「じゃあ、お前の一番叶えたい願いを、神のパゥワーで、実現させてやろうぞ!」今一番の願望に心当たりはないが、
「いいだろう、だったら、今すぐ叶えろよ」売り言葉に買い言葉で、反射的に応えた。
「さっさと出すぜ、ハッッ!」自称神が上機嫌で言うと、ありとあらゆる我が家の蓋が開かれ、煙が大量に出てきた。それがドライアイスであると判断した俺は、バスローブの不審者を追い払う為に、スマホを手に取り、1、1、0と押した。そして、通話ボタンを押した、はずだ。その次の記憶が、朝日を浴びて、普段使用している布団の中で目を覚ましたことなので、寝落ちする前の記憶は曖昧だった。
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