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いっくんと出逢ったのは、オレが八歳の頃だった。
オレには二歳年上の兄がいる。親が共働きだったので、学校の友達と遊ばない日はほぼ毎日、兄と一緒に遊んでいた。その兄の親友が、いっくんだったのだ。
オレがよく遊んだ人は、同級生を除けば、いっくんたちのグループだった。
そのグループは人数も多いが、年齢も幅広く、上は高校三年生、下は小学二年生ーちょうどオレがそのグループに入ったときの学年だーなので、かなりの差があった。そのグループで行うことは、基本的には秘密基地ごっこーそれも、かなり本格的なーだったり、その周辺の小川で水浴びや木登り、山登り、時には街中のショッピングモールに行くこともあった。運動するときは、上級者に助けてもらったので、すぐに仲良くなれて、人見知りだったオレの気が強くなったと思う。
それは小学校三年生のとき、普段遊びに行くショッピングモールで、初めての買い物をしたことだった。小遣いで買ったアイスクリームを早速食べようとしたが、生来的にドジなオレは何もないところなのに躓いてしまった。そのとき、
「大丈夫か」いっくんが心配してくれたが、大事なアイスを落としてしまいパニックになっていたオレは、何も答えられなかった。すると、
「これ、あげるよ」そう言って、彼のアイスクリームをくれた。
「あ…ありがと」言葉に詰まったのは、不自然な場所で躓いたことを恥ずかしく思う気持ちもあるけど、困った人に手を差し伸べられる彼に憧れを抱いたからだと、今では思う。
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