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中学二年生のときにも、それと似たような出来事があった。
その年頃といえば反抗期、オレの場合も例外なくその時期に来た。母との仲はもちろん悪く、今ではあまり覚えていないような些細なきっかけで火花を散らしていた。
今でもそうなのだろうが、オレはいわゆるわんぱくな人だ。反抗期のオレも当然ながらわんぱくなので、家出は日常茶飯事だった。基本は日帰りだが、一度だけ、二泊三日だったことがある。
もちろんその理由は忘れたので、家を飛び出したところから話そうと思う。
いつもどおり、無一文で外に出ると、いっくんと二人の知らない男の人ーいっくんの高校の同級生なのだろうーが並んで歩いているのが見えた。
「おーい、いっくんー!」気付くとオレは、大声を出していました。
友人の一人に肘で脇腹を突かれ、下心がありそうな笑みを浮かべた友人たちに分かれを告げたいっくんは、こちらに近づいてきた。
「こんな時間に出歩くなんて、ゆうくん、家出でもしたか?」
「…」図星だった。
「…じゃあ、俺の家に来いよ。どうせ行くとこ、ないんだろ」かなり暗かったけど、いっくんの頬は赤く染まっていた。
いっくんが事情を説明してくれたので、オレはすんなり家に上がりこめた。いっくんパパとママにジロジロ見られはしたが、難なく彼の部屋に入った。
「これがバレたらヤバいの、わかってるよな、ゆうくん」
「もちろん」
「俺の方は気にしなくていいけどさ、お前は大丈夫か?」
「こっちは全然。むしろ、大丈夫じゃなさそうなのは、いっくんじゃないのか?」
「…」やっぱり、ノットオッケーだった。
いっくんの服を借りて制服から着替えた。その後、いっくんママの手料理にありつくことができたのは嬉しかった。
そして、いっくんの家でくつろぎながら、二泊三日を過ごした。詳細は例の如く覚えてないが、快適だった。その後、両親にこっ酷く叱られたが、オレは妙に誇らしげだった。また、いっくんの優しさを直接感じられたからだ。
いっくんがくれた優しさは、今も消えない。だからなのか、下級生には優しく接する、いい癖が付いた。その癖が消えないような生活をする、それが、オレの目標。
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