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女王様と初下校
次の日の朝、和彦の予想通り、優弥は朝会で生徒会長として壇上に立っていた。
いつも通りに気丈に振る舞っている優弥のようだが、その手首には亮太のリストバンドがついているし、どこか元気がないようにも思える。
やっぱり、昨日のことを僅かながら、気にしているのだろう。
千歳は今日こそ、優弥を家まで送るつもりでいた。
そうでもしなければ、優弥とちゃんと話す時間がないことに気づいたからだ。
クラスが違う自分達が話せるとしたら昼休みか放課後だが、午後の授業があったり迎えの車が来たりで、話せる時間は限られてしまう。
ゆっくり話すには一緒に下校して、放課後以降の時間をもらうしかない。
優弥に帰りの迎えを断らせるとなると、それを伝えるチャンスは朝しかないだろう。
朝会が終わり、みんなが体育館から教室へと向かう中、千歳は途中にある渡り廊下から少し静かな中庭へとでた。
スマートフォンを取り出し、電話帳から優弥の名前を探す。
『深海優弥』
その名前で表示された電話番号もメールアドレスも、正直に言うとあまり見覚えがなかった。
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