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その日の授業が、千歳は何も頭に入らず、とても長く感じた。
放課後が近づくにつれてだんだんと落ち着かない様子を、亮太に笑われるくらいに千歳は集中していなかった。
帰りのホームルームが終わるなり、和彦が声をかけてくる。
「千歳、コレ」
「なに?」
いきなり目の前に突き出された袋に、千歳は何だかわからず聞き返した。
「俺から二人への仲直り記念のプレゼント」
「ちょっと、カズ! それって……ぐぉっ!」
何かを言いかけた亮太は、和彦の脇腹への肘鉄により、見事に撃沈した。
そんな亮太を気にすることなく、和彦は話を続ける。
「あっ、今は開けるなよ、後でな」
「?……ありがとう」
終始笑顔の和彦が怖くもあったが、とりあえず千歳はそれを受け取りカバンへとしまった。
「まあ、結果はもうわかってるけど……」
「頑張って会長を落としてこい!」
笑顔の和彦と、なんとか復活した亮太の激励を受けて、千歳は正門へと向かった。
そして正門へと着くと、すでに優弥が立っていてその珍しい光景に、周りの生徒達が振り返っている。
「待たせてゴメン」
謝りながら千歳が走り寄ると、優弥は不機嫌そうな顔をした。
「遅い……お前が呼んでおきながら」
「だから、ごめんなさいって」
何だかいつも通りの態度が戻りつつある優弥に、千歳も自然と接することが出来た。
「じゃあ、帰ろうか」
「ああ……」
優弥と二人で正門を通る。
それはこの学園生活で初めてのことだった。
周りの生徒が二人を遠巻きに見ているのが痛いほど感じる。
優弥が迎えの車ではなく、歩いて門を出るのも珍しければ、千歳と一緒に歩いていることも珍しいのだろう。
自分達はエッチの時以外は、殆どといっていいほど接触がなかった。
それだって授業中や放課後の人の少ない時間帯だったし、連絡も優弥から一方的に送られてくるだけだった。
みんなの前で、堂々と優弥と並んで歩ける。
それがなんだか、千歳はとても嬉しかった。
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