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(どうやって話を切り出そうか?)
千歳は歩きながら、本題を話すタイミングを考えていた。
他愛もない会話から……と思っても、その他愛もない会話すら思いつかない。
ゆっくり話すには、どこかで落ち着いた方がいいが、お店などに入ってしまうと周りが気になって話どころじゃないだろう。
「……瀬……高瀬!」
「えっ、何?」
自分を呼ぶ声と、後ろに引っ張られる感覚に千歳は我に返って立ち止まった。
「歩くの……早い」
千歳のブレザーの裾を右手で掴んでいる優弥にそう言われて、千歳はいつの間にか優弥のちょっと前を歩いていたことに気づく。
「あっ、ごめん!」
考えごとをしていたせいか、歩く速度があがっていたようだ。
謝って優弥の顔を千歳が覗き込んだ時だった。
(……え?)
「なにっ、どうした? 急に」
優弥の泣き顔が視界に飛び込んできて、千歳は驚いた。
「……嫌なんだろ?」
「え? 何が?」
言われた言葉の意味がわからずに聞き返すと、優弥は千歳の胸に顔を埋めてくる。
その背中に腕を回していいものか悩んでいると、嗚咽を漏らしながら優弥が言う。
「……やっぱり……俺なんかと、歩くの……嫌なんだ……」
「はあ? ちょっと待て、優弥!」
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