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聞き捨てならない言葉が聞こえた気がして、ここが一般の道だということも忘れ、千歳は慌てて優弥の身体を抱き締めて、その頭を優しく撫でた。
「優弥と歩くのが嫌ってどういうことだよ?」
「だってお前、さっきから何も言わないし……目だって、合わせようとしないじゃないかぁ」
それだけ言うと、優弥は千歳の胸に顔を押し付け、さらに泣き出した。
「あ~、優弥、とにかく落ち着け。ここじゃあれだから、違う場所で少し落ち着いて話そう。な?」
さすがにいつ誰が通るかもわからない往来の場で、男子高校生が抱き合っているのはまずいだろう。
千歳の言葉に優弥が小さく頷くのを確認すると、千歳は優弥の手を引いてその場から移動した。
◆ ◆ ◆
「少しは落ち着いた?」
ベンチに座らせた優弥に、買ってきたばかりのミルクティーのパックを手渡しながら、千歳はそう聞いた。
「うん……」
受け取りながら小さく返事をした優弥は、涙は止まったもののまだ少し目を赤くしていた。
この公園は、夜になると恋人達の溜まり場になるが、まだ夕方近くの今ならほとんど人の姿も見当たらない。
ここでなら、周りに聞かれる心配もないだろう。
そう思った千歳は優弥の隣りへと自分も腰を下ろす。
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