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「で、さっきの一緒に歩くのが嫌って何? いつ、俺がそんなこと言った?」
「……言ってないけど」
千歳がわざと怒ったように言うと、優弥は拗ねたように答える。
千歳はそのまま責めるように言葉を続けた。
「じゃあ、なんでそういうふうに思ったわけ?」
「……だって正門出てから、一言も喋らないし……どんどん先に行こうとするし……」
「それに関してはごめん。ちょっと考えごとしてたら、集中しすぎちゃって」
少しずつ話し始めた優弥に千歳は素直に謝った。
自分から誘っておきながら、あの態度はないだろうと、今さらになって千歳は反省する。
「……やっぱり、他の男とキスするような俺なんか……高瀬は嫌いになったのかと思った……」
震えるような声で、そう呟いた優弥を、次の瞬間千歳はしっかりと抱き締めていた。
「あれは優弥のせいじゃない! 不可抗力だ」
「でも、俺が相馬を生徒会室に入れなければ、あんなことにはならなかった! どうなるかなんて、わかっていたのに……」
千歳の耳元で優弥が辛そうにそう言った。
きっと、あれからずっと優弥は自分を責めていたのだろう。
やっぱり、昨日は家まで送っていくべきだった。
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