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疑問系だけど確信的に言われて、私は言葉に詰まったまま小さく頷いた。
「へぇ、誰?」
「……秘密です」
「なに、それ」
黒田くんがあっさりと吹き出す。そこに、追求しようという雰囲気はなかった。
ほっとしたけど、あれ?って思った。
「告白しないの?」
「……たぶん叶わないから」
「そっか」
なんて、ほら。興味のなさそうな返事。
話の終着地点が見えない。
会話の流れが止まる。
両手で持った缶コーヒーをぎゅっと握って、その香りに急かされるように、何か話さなきゃと口を開く。
「黒田くんは、誰が好きなの?」
……失敗。
「てか、いること決定?」
黒田くんが、おかしそうに笑う。
ごもっともですね。
「いないの?」
「いるけど」
胸が、大きく高鳴る。
いるんだ。
いるんだ。ちょっと、ねぇ、どうしよう。聞きたくないよ。
心臓がうるさい。聞きたくないよ。だって、きっと、それは私じゃない。
逃げ出したい。
「誰って聞かないの?」
「……だれ?」
声が震えるかと思ったけど、意外にもきちんと黒田くんの目を見て、私は聞いた。
黒田くんは笑う。
まるで、嘲笑うみたいに。
「牧田彩香」
よりにもよって。
「え、だ…て、彩香ちゃんは沢村くんと…」
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