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優しく微笑みかけられて、戸惑いながら缶コーヒーを受け取る。
あったかくて真っ黒な液体を口に含んで、眉を寄せた。
「あ、ごめん。ブラックじゃないほうがよかったよな」
「ううん、目が覚める。ありがとう」
そう強がって、無理やりコーヒーを流し込む。
これ、いつも黒田くんが飲んでるやつだ、と思うと少し嬉しかった。
私と黒田くんは、そんなに仲が良いわけではない。
さいきん修学旅行の班が一緒になって、少し話すようになったくらい。
同じ班になったのも、私の友人の彩香ちゃんと、黒田くんの友人の沢村くんが幼馴染だったからだ。
彩香ちゃんも沢村くんも、すごく元気で明るくて、修学旅行のルート決めなんかはいつも大騒ぎだった。
黒田くんはそんな二人をいつも冷静にいさめてくれて、うまく意見が言えない私にも穏やかに接してくれた。
大人っぽい黒田くんは、私の憧れだった。
「よく寝てたけど、寝不足だった?」
なんとはなしに尋ねられて、誤魔化すように笑顔を返す。
「ちょっとね」
寝不足の原因は黒田くんだ。
ただの憧れは、いつの間にかほのかな恋心になっていた。
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