ブラックコーヒーに塩

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 決定的だったのは、修学旅行の準備中。いつも通りまとまるまでずいぶん時間がかかった話し合いのあと、「佐伯、ありがとな」とわざわざ声をかけてくれたのだ。  お礼の理由が思い当たらない私が、ぽかんと黒田くんを見返すと、 「あいつらなぜか佐伯の言うことは聞くから。佐伯がいてくれてマジでよかった」  と柔らかく笑いかけられたのだ。  落ちた。  そんなの無理だ。落ちちゃうよ。  彩香ちゃんと沢村くんが私の意見を聞いてくれるのは、口下手な私に同情してくれてるからだろうけど、それでも黒田くんにそんな風に言ってもらえると、自分がなにかいいものになったみたいで嬉しかった。  それから、私の頭の中は黒田くんのことでいっぱいになっちゃって。修学旅行が早く来てほしいような来てほしくないような。そんなもだもだした気持ちを抱え続けた結果がこの寝不足だった。 「なんか悩みごと?」  妙に突っ込んでくる黒田くんに困ってしまって、私はとりあえず首を振る。  どうすればあなたと仲良くなれるか考えてて眠れませんでした、なんてまさか言えるわけもない。 「恋愛関係、とか?」  静まり返った教室で、ひそやかに爆弾を落とされて、私はパッと顔をあげてしまう。 「あたりだ」  黒田くんの目が細められて、薄い唇が弧を描く。 「佐伯って好きな人いるんだ?」     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加