ブラックコーヒーに塩

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 大きな動揺と、小さな小さな期待を込めて。    あの二人はまだ付き合っていない。  けれど小さな頃からの幼馴染だというあの二人の間には、他人には入り込めない空気があった。  いずれ収まるところに収まるんだろうって周りのみんなが思っていると思う。 「昨日、沢村にばれちゃったんだけど」 「うん」  半分くらいしか頭に入ってこなかった。半分くらいは頭に入った。 「沢村は別の子が好きなんだって」 「……え」  私のわずかな期待があっさりと踏み潰されて、私は呆然と黒田くんを見つめる。 「もっと大人しくて優しくて、笑顔が可憐な女の子が好きなんだってさ」  黒田くんが含むような目で私を見る。  ああ嫌だ。嫌だ、この流れ。 「そう、なんだ」  掠れる声でなんとか応答して、俯く。  ぜったいに変な顔をしてるだろうから。 「そうゆうわけだから、協力よろしくね」  黒田くんの軽い口調に、もう一度のろのろと顔をあげると、黒田くんは少しだけ緊張したような顔をしていた。 「……無理だよ」  私は、出来るだけ笑顔を浮かべて、すごい引きつってただろうけど、でも笑顔で言った。  それが、できれば冗談にでも聞こえるように。 「なんで?」     
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