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黒田くんの声に真剣味が帯びる。そこには悲しみとか動揺とかが交じっててちょっと焦った。
なんでって、それは私があなたを好きだからだよ。好きなんだよ。嫌だよ。そんなこと頼まないでよ無神経。
まだ期待を捨てきれずにいる私はどんでん返しを狙ってたりするんだよ。だって、彩香ちゃんが好きなのは沢村くんなの。だから、黒田くんが振られれば私にもまたチャンスがあるかもなんて。
なんてずるいんだ。ずるいよ私は。いっそのこと、彩香ちゃんが好きなのは沢村くんだってはっきり言ってしまおうか。
でも、黒田くんが傷つくのは見たくない。
私が物思いにふけってる間に、黒田くんは一つの結論にたどり着いたらしい。
「牧田が、沢村のことを好きだから?」
その声には、明らかな落胆とか喪失とか悲しみとかが詰まっていて、なんだか小さくて弱弱しくて、黒田くんらしくなくて。
それは事実だけど、実際、私もそう言おうと思ったけど、なんだか、すごく悔しかった。
当たり前だけど、その考えは彩香ちゃんが中心で、黒田くんの頭の中は彩香ちゃんでいっぱいで、私のことなんか片隅にもなくて。
「違うよ」
私の言葉に黒田くんの顔があがる。
「私が、黒田くんを好きだからだよ」
黒田くんの目が、思い切り見開いた。
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