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放課後。
教室を一番に出て一番に寮に戻る俺が、なぜ日が傾きかけているこの時間まで校舎内にいるのか。
それは、風紀室の場所がわからず、かれこれ三十分ほど一棟から五棟までうろうろ行き来しているからである。
方向音痴っていうわけじゃないんですよ?
ただこの学園がやたら広いっていうのと、風紀室なんて今までお世話になったことなかったからわからないっていうね。
もう歩き疲れたし、スマホくらい明日になれば返してくれるだろう、と思いだしてきた。
いやでも風紀室に行かない方が明日面倒になりそうだなー、とか考えていると。
「…いた、あれだよ…」
「今ひとりじゃん…チャンスじゃね?」
…なにやら不安な会話が耳に届いた。
おいら身の危険を察知…!
全力で走り出す。
だがしかし時すでに遅し。前を見て、キキーッとブレーキがかかった。
「…前に回り込んで挟みうちはやめてよー…」
階段の下から、どうやら背後にいるチワワたちの仲間らしい軍団がやってきたのだ。
「あ、お前…昼の!」
どうやら、回り込んだわけではなく、単なる偶然らしいが、気づかれてしまった以上、危険は危険。
ひー、おそらく生徒会の親衛隊だろう、やっぱ今日のうちに殺されそうだな…!
「ちょうど良かった、キミに言いたいことあったんだよね」
軍団の先頭にいた、可愛らしいお顔の男子のその言葉を皮切りに、あらゆる方向から罵詈雑言を浴びせられる。
いつの間にか囲まれてる…だと…!
もれなく全員可愛らしい感じの軍団だったので、不覚にもちょっとほわわんとしてしまったけど、スルーしてた罵詈雑言をよくよく聞けば、そんな気持ちはどっかへ飛んでいく。
記すのめんどうだから記さないけど、君たちその語彙力をもっと別のことに使った方がいいと思うぜー。
「ねぇちょっと、聞いてんの?!」
「うぐぇっ!」
思いっきり胸ぐらを掴まれて、壁に叩きつけられた。
えっ嘘、この細腕からどうしてそんな怪力が?!俺より強いんじゃない…?!
というか、苦しい。
頭を打ったからか、ぐわんぐわんする。
これは…脳震盪ですかねドクター?
へいドクター、ぷりーずへるぷみー…
…情けないことに、俺の意識はそこで途切れた。
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