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「ああ、今日はコレがあるから」
そう言って指差したのは、メニュー表の一角。週に一度の特別メニューのエリアだ。
今回は『激辛!デスソースパスタ』と、なんとも攻撃力の高そうな字面が並んでいる。
料理のイメージ画像は、血の海のごとき赤さのソースに、これまた赤い唐辛子の練り込まれたパスタが絡み合っている絵だった。
ぜってー食いたくねぇな…。
「……えっ、先輩これ食べるんですか?正気ですか?」
「ん?そうだけど、シグも食べる?」
食べるなら奢るぞ、と言ってくれるのは金欠の俺にとってはありがたいが、激辛パスタは食べられないので遠慮しておく。
いや、別に辛いものが食べられないと言うわけではない。
カレーだって辛口を食べるし、うどんにも七味をダバダバかける派だ。
だがこの料理は、食事のちょっとしたスパイスの域を軽く超えている。劇薬だ。
「そ?じゃあ頼もー」
俺の向かいに座ったまま、軽く手を挙げてウェイターを呼ぶ。本気で食べる気なんだ…怖…。
そのまま、激辛パスタとオムライスを頼んでしまった。
「…え、オムライスも食べるんですか?」
見た目によらず、大食らいだな。
というか、ここで食べる気なの?えっ激辛パスタ前にしたら絶対噎せる自信あるんだけど。
「いや?シグは見た目的にオムライスかなって。嫌い?」
「ぅえ?!あれ俺の分だったんですか?!俺はチビだから子供舌だろうってことですね?!あとでお金返します!!オムライスは好きです!!」
まさか自分の分だとは思わず、水をこぼしかける。
あと、俺は志樹先輩の期待を裏切らない子供舌だ。好物はと問われれば、「カレー、オムライス、プリン」と答える自信がある。
「なら良かった。まあまあ、ここは俺の顔立てると思って奢らせて。ちょっと、話もあるから」
「じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとうございます」
素直に礼をいい、志樹先輩の方を見る。
話とは、何なのだろうか。
神出鬼没な先輩がじきじきに話をしにくるということは、それなりのことなんだろうけど。
「まあそんな焦りなさんな。昼休みはまだあるんだから、ゆっくり話そうぜ」
「もうあと十五分もないですけど……」
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