五月の嵐

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「そ、危険。デンジャラス。わかる?」  子供に尋ねるような口調で顔を覗き込んできた。    この人、ちょくちょく俺のことを馬鹿にしてくるな。くっそ。 「わかりますよ、そんくらい。生徒会の親衛隊とかに制裁されてもおかしくないのはわかってますし」  いままでも俺の席に立派な菊の生花がおいてあったこともありましたしね。  しかし、先輩からはうーん、という唸り声がしてきた。なんだ、なんか間違ってました? 「いや~、それもあるし、間違いではないんやけど。テストでいうなら三角、減点やな。君、もっと危機感持ったほうがいいで。危ないのは、君の貞操なんやから」 「……ほぉ…?」  自分でも驚くほど間抜けな声が出た。  いやでも、えっ、なんで? 「なんでか、わからんって顔してんなあ。出血大サービス、教えたろ!」  確かに理由はわからないけど、教えてくれともいってないのに勝手にしゃべりだした。  これ、あとで情報料とかいわれないだろうな。  ちなみにこの仮にも風紀副委員長である先輩は、学園内の監視カメラで得た情報に値段をつけて売るという、風紀がそれでいいのかと問いたくなるような商売で、うっはうっは稼いでいるらしい。  金持ちのくせにこれ以上稼いでどうすんだよ。 「君のことは入学式から風紀でマークしてたんやけど、君がいままでほんまにうまいこと気配消してたから、あんまり風紀の世話になるような案件は起きひんかってんけど…。 最近、あの転校生が来てから、いろいろ目立つことが増えて、二、三年の間でも人気があがってきてて、新歓祭は危険やって話や」  理解できまちたか~?みたいな顔で見られても。  いろいろつっこみたいとこはあるんだが。 「まず、マークってなんですか、監視してたんですかこっわ」  やだストーカー!?と身を抱きすくめると、さすがに頭をひっぱたかれた。 「アホか。風紀では、襲われそうやな~とか、そういう危険のある生徒を目星つけて、できるだけそういう危険のないように、…まあ、監視、になるけど…そういうことや」  無理やり納得させにかかってきた。どころかこの話はもうおしまいだとばかりに席をたつ。  そして、俺が引き止める間もなくひらひら手を振ってどこかにいってしまった。  …こんなとこに一人で残されても。
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