第一章

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目の間に広がる背中に声をかける。 「――でね、明美ったらいっぱい私の好きお菓子を買ってきてくれて。これで元気になってって。私にできるのはこんなことだけだからって。本当に優しくって――」 校舎の影にひそみ校門の方をじっと見つめる松井健太(まつい けんた)に話しかけるが。返答は帰ってくるはずもなく言葉は暗闇へと消えていく。しかし立花佳織(たちばな かおり)は気にすることなく話し続ける。「そうだ!明美と言えば中学のときの修学旅行覚えている?健太と同じ班で――」 健太の瞳が揺れ動く。振り向くと遠くの昇降口から話声と共に人影が出てくるのが見える。
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