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その1
岬の近くで、ひとりの少年に会った。
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こんにちは。今日はキャンプですか?
民俗学のフィールドワーク?そうですか。
このあたりにはいろいろありますからね。
僕ですか?いえ、学生じゃないです。
フリーター、になるんでしょうか。
このあたりには、ちょっと縁があって。
はい、人魚のゆかりの村ですか?
確かにここにはそんな伝説もあります。
ほら、昔は、あの岩のところまですべて海だったそうです。
そのくらいの昔には、ここに村があったこともありました。
けれど、村が無くなり、峠のこちら側に人が住まなくなって、とても長い年月がたつのです。
今ではその伝説も風化して、知るものもわずかです。
よく、ご存知ですね。
え、先祖をたどればこの地方の…?
わあ、本当ですか。それでこの地方の民俗に興味を持たれて。
実は僕もです。
ええ、さかのばればここの住人だったそうです。
僕はシオといいます。
今はたまに来るくらいです。以前は縁のあるものもいたんですが。
僕たち先祖をたどれば同郷というわけですね。
けっこうな偶然ですね。
草…?
白と赤の、鱗のような薬草を訪ねて、ですか。
確かに昔は多く自生していたと聞きますし、今も目撃情報はありますね。
そうです、昔は流行り病気を治す特効薬でした。
今は、もうまれにしか見ません。
今はもうそんな病もありませんからね。
でも、当時はかかったら十日のうちに死ぬという恐ろしい病でした。
いいですよ、土地勘はありますから、ご案内します。
人魚と村の伝承は知っています。
では、お話しましょう。
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