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ここにあった、山と海の間の、小さな村には、一握りほどの人口が、
漁業と山の幸をおもな糧として、つつましく生活していました。
しかし、ある年、ここら一帯を、死神のような流行病が襲ったのです。
罹った人が突如高熱を出して倒れ、十日ほど水も飲めず、何も食べられず、苦しみ抜いた挙句、なすすべもなくこときれるという、恐ろしい病でした。
その病が流行っていることはすでに近隣の村から伝わっていました。
だから村人はそれなりにできる予防はしていたのです。
でもそんなものは何にもなりませんでした。
その夏の初め、まず最初の子供がこの村で倒れ、
翌日には死んでしまいました。
大人はすぐには発病しなかったようです。
でもなにしろ、続けて、なだれのように子供と老人がばたばた倒れていったのです。
村人たちは恐慌に陥りそうになるのを必死にこらえて、看病しておりました。
病が蔓延しはじめて半月ほどたったでしょうか。
村の中の、とある一人の少年も、その病にかかり、高熱を出して寝込んでいました。
少年は、10を幾月か越したばかり。
名前がないと話しづらいので、そうですね、とっさに思いつきませんし、僕と同じ、シオとしておきましょう。
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