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「おとう、たおれた。シオ、おとう、たすけて」
シオがアオと駆けて、山の入り口の洞にたどりついたとき、
村の男たちが集まって、洞の入り口から、松明を手に、ほうぼうへ散っていくのが見えました。
男たちはかろうじて父が逃したアオを追って、付近を捜索しに出たのです。
男たちが散っていったあと、兄弟は、洞の奥にある、
子供だけが通れるほどのすきまから、洞に入りました。
中には、血溜まりの中に倒れている父がいました。
父はアオを捕らえ、殺して連れ去ろうとする男たちと戦い、瀕死の重傷を負ったのです。
父は、シオたちが必死に呼び、抱き起こすと、目を開き、
彼らをみとめて、苦しい息の下から、逃げろと言いました。
そして、おまえたちは二人きりの兄弟だと。
洞の入り口のほうから、村からの新しい手勢の話し声がしました。
自分たちを探す、新しい人手が来るようです。
シオは死にゆく父を残し、アオを連れて洞の奥の秘密の穴から出て、走りました。
そうするほかに、なかったです。
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